横浜市南区弘明寺のアレルギー科・耳鼻咽喉科
いでい耳鼻咽喉科医院

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ダイビングでの外リンパ瘻 特に浮上時に注意

最近、ダイビング中に、思いがけず急浮上して外リンパ瘻となった患者さんが2人来られました。1人は初心者でした。もう1人は経験豊富なベテランダイバーで、海中で激しいめまいが起こり、前後左右上下が分からなくなり、ダイビングで死ぬ時はこんなものなのか、と思ったそうです。

外リンパ瘻は、ダイバーならば、必ず知っておかなければならない、死亡事故にも繋がる最重要疾患の1つです。ですから、Cカードを取る時の教科書には必ず記載されています。頻度は多くはないためか、忘れているダイバーが少なくない印象です。

まずは基本的なおさらい。
体内にはさまざまな所にエアーが存在しています。特にダイビングで問題になる場所は肺、副鼻腔、中耳。そのエアーの体積は、水圧により、潜行すれば小さく、浮上すれば大きくなります。地上は1気圧、水深10mで約2気圧、20mで約3気圧、30mで 約4気圧。ダイビングで水深30mから浮上していくと、気圧が半分になる水深10mで体内のエアーの体積は2倍に。水深10mから水面までは2倍になります。つまり、水面に近づくとにつれ、急速に体内のエアーの体積が大きくなっていきます。浮上時に安全停止が必要な理由の1つがそこにあります。

浮上時に、体内のエアーを出し続け、エアーの体積を減らしていかないと、風船が膨らんで、最後には破裂してしまうのと同じことになります。

肺が破裂すると、肺の空気が漏れて、呼吸が出来なくなります。この場合は、なかなか助かることは難しくなります。でも、肺には丈夫な気管が繋がっていて、急浮上時にしっかりと吐き続けられれば、大事にならないことが多いです。

中耳は鼓膜の奥の小さなスペースで、細い耳管で上咽頭(鼻腔の突き当たり)と繋がって、エアーが出入りしています。浮上時に、中耳内のエアーの体積が急に大きくなると、弱い鼓膜に穴が開いてしまいます。この場合には、難聴と共に激しいめまいが起こることが多いのです。このめまいは長くは続きません。理由は冷たい水の刺激によることが大半で、中耳内に入った水が体温と同じにあたたまるとおさまります(医療機関ではカロリックテストとして実際に行われています)。このような患者さんは毎年当院にはたくさん来られます。

他に、中耳と更に奥の内耳との間にも別の鼓膜があります。第二鼓膜とも呼ばれる卵円窓と正円窓です。そこが破れ、内耳の中の外リンパ液が漏れ出すのが、外リンパ瘻です。内耳には平衡機能を司る三半規管などと聴力にとって最も大切な蝸牛があります。そのため、陸上に上がってからも、めまいがなかなか改善しなかったり、聴力が変動するようになります。
軽症の場合には安静にしていると2週間くらいで治りますが、めまいや聴力が改善しない場合には、手術で漏れている場所を塞ぐ必要があります。また、一度外リンパ瘻になると、再発しやすくなることもあります。ダイビングに詳しい耳鼻咽喉科医師の診察を受け、指導を受けるようにして下さい。